長らく探していた曲がありました。
僕の記憶だと、あれはまだ僕がギリギリ学生だったくらいの時分だったでしょうか?
たしか秋葉原のラジオ会館の中にある書店だったと思うんですが、まあそれもこれもぜんぶ記憶として曖昧だったからこそ、のちのちめちゃくちゃ苦心するはめになるのですが、それはそれとして、記憶の中の僕はなにか不思議な曲が流れる店内ですごくグロテスクな成人漫画を立ち読みしておりました。
それで? そうですね……勘がよい読者はすでにお気付きでしょうが、その時店内で流れていたこの不思議な曲が、やはり気になっていたのでしょうね、いつまでも僕の頭の中に居座り続け、しかし曲名もアーティスト名もわからぬままの状態で、長らく僕を苦しめたのです。
あれはなんだったのか? 夢だったのか? しかし悪い記憶じゃなかったような気はしているので、実在しているものであれば、また会いたい……。
だがしかし、頼りになるのは断片化し、風化し、時間の経過とともに徐々に確実性を失ってゆく、そんな頼りない記憶のみ……。
会いたいけど会えない。そういうもどかしさが長年僕を苦しめたわけです。
でも、今日それがすっきりしました。
はい。そう、僕が探していたあの曲は、あの曲の名は、『Folklore』でした。
アーティスト名は『クラムボン』です。
なるほど、名前だけなら知っているといったアーティストでした。
そりゃ見付からないわけだ……。
ちなみに、今日この動画に行き着いた経緯ですが、昼頃になんとなくようつべでこれまたなんとなくNujabesの楽曲を漁っていたんです。そしたら――
はい。そう、件の曲をNujabesがアレンジしていました。
しかし、これ記憶のヤツとなんか違うなぁ、と思ったので、すぐに原曲のほうを探しましたよ。
それで先のFolklore(原曲)のMVを見付けたという流れですね。
そうそう、僕の記憶だと女性ボーカルの他に男性ボーカルの声もあったのですよ。
それで、この記憶のせいで、あれ? 男女のデュエット曲だったっけ? という感じで探していたこともあったので……そりゃもうますます見付からないわけ。
ただ、この記憶のおかげでNujabesアレンジではないとわかりましたね。
Nujabesアレンジは男の声が排除されているか、かなりゲイン下げてる感じなので。
だから僕があの時耳にしたのは原曲のほうだと思いました。
それから、それが確固たる確信へと変わるための一助となったのが、冒頭の僕が立ち読みしていたすごくグロテスクな成人漫画ですね。
これ、実は件の曲と一緒にのちのち『あれ、なんだっけな?』となったものの一端であったりしますが、こっちは件の曲より遙かに判明が楽で、そして早かったですね。その名も、『地獄の季節 -グロリズム宣言-』という本です。
それで、改めてこの本の発売日を調べてみました。
2003年11月29日、発売です。
それでは、Folkloreが入っているアルバムのリリース日は?
2003年11月19日、リリースです。
おお……つまり僕があの時、恐らく新発売であったであろう例のエログロ漫画を立ち読みしていた時に流れていても違和感ないではないですか。
漫画よりもちょっとだけ先にアルバムがリリースされているので……この『ちょっとだけ先に』というのがミソで、まあ時期的に新曲なわけですから、店内で流れているというのも合点がゆきやすい。まあ店内で流れているものが、有線音楽放送なのか、はたまた店員のセレクト垂れ流しなのか、そういう意図的なものは知りませんがね。しかしお店で新曲を流すってお店に置いている新譜の宣伝になるので普通ですよね。懐メロメドレーってのもありますが……今回は探していた曲の発売日が判明している状態なので、それには当たらないでしょう。
だから、真相はこうです。
僕はあの時、リリースされたばかりのFolkloreが流れる店内で新発売の地獄の季節 -グロリズム宣言-を立ち読みしていた。
ああすっきりした!
ところで、僕はなんであんなにグロテスクな漫画を手に取ってしまったのだろう? というような疑問があった時期もありましたが……なるほど、『地獄の季節』、ね。
このあるちうるが手に取るわけですよ。わかる人だけわかってください。
そして、このエログロ漫画が関係しているかわからないけれど、僕はのちに、自身の同人サークルにてエログロ漫画同人誌を刊行することとなる。